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ボレロ村上 - ENiyGmaA Code

中3女子です。

InDesign でラノベの組版をする

中3女子です。

今度友人に InDesign組版を教える機会ができたので、資料作成ついでにブログ記事に書くことにしました。同人ラノベ組版InDesign で行ってゆくチュートリアルです。

版面の設計

まず版面(はんづら)を決めましょう。版面とは本文のレイアウトのことです。
即売会で小説同人誌を買うとさまざまな本文デザインの同人誌があります。独創的なデザインで作品の世界観を引き立てているものもあれば、中には読みづらくて読書意欲を損ねるようなものも少なくありません。
読書意欲を損ねるような版面とは、たとえば
・フォントがやたらでかい、もしくは細かすぎ
・行間をとりすぎてスカスカ、もしくは詰まりすぎ
などがあります。
単純なことですが、これが上手くできているかどうかで文章のクォリティまで違って見えてきます。一番無難なのは、手元にある商業レーベルのラノベを実際に定規で測って参考にすることです。自分がいま標準にしている文庫判の版面は次のようなものです。おおよそ電撃文庫を元にしています。

  • 本文:11.5Q/A-OTF リュウミン Pr5 L-KL
  • 行間:7H
  • 行文字数:42/行数:17
  • 地:12mm/ノド:18mm (天:15.25mm/小口:10.125mm)

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本文のフォントはリュウミンL-KLです。これは電撃文庫でいま使われているものと同じものです。ちなみに暗黒定数式では本文にI-OTF明朝オールドPro Rを使っています。これも商業レーベルでリュウミンと同じくらい広く使われているフォントです。これらはいずれも有料の商用フォントです。このほか、同人小説の本文ではヒラギノ明朝や小塚明朝もよく使われているようです。
本文のフォントサイズは 11.5Q。"Q"とは日本の印刷業界でよく使われる「級」単位で、1Q=0.25mm です。つまり 11.5Q は 2.875mm/文字、ポイント換算すると約8.2ポイントになります。


行間は 7H。"H"は"Q"と同じ単位なのですが、アキを表現するときは"H"と表記されます。7H は本文 11.5Q に対して約60%になります。ルビのサイズは一般的に本文の50%になるため行間は少なくとも50%必要で、50~70%くらいが読みやすいとされています。
自分もそうでしたが初心者は文字が潰れるのをおそれてフォントや行間をつい大きめにとってしまいがちですが、商業レーベルのそれは素人の感覚よりも実際はかなりコンパクトになっています。書いてしまうと単純なことですが、ここを気をつけると俄然プロっぽく読みやすい版面になります。


行文字数42、行数17は電撃文庫ガガガ文庫など大手ラノベレーベルで用いられている数値です。
地/ノドは知らないと分かりにくい用語ですが、版面をページに配置するときどの方向を基準にするかという意味です。天・地はそれぞれ本の上下、小口・ノドはそれぞれ本の外側と内側(綴じる側)を指します。つまり「地:12mm/ノド:18mm」は下側から12mm、内側から18mmそれぞれアキができるように版面を配置するということです(この場合、天/小口は自動的に決まります)。
ちなみにノド18mmというのは、多くの商業レーベルのラノベよりもかなり広めにとってあります。これには理由があって、同人印刷の平綴じは一般に製本の糊付けが固めでノド側が開きにくい傾向にあり、ノド側のアキを十分に取っていないと文字が隠れたり見づらくなる場合があるためです。最低でも 15mm をとっておくと安心と言えるでしょう。

ファイルを作成する

最初に決めた版面に沿った新規ファイルを作成します。
メニューの [ファイル]→[新規]→[ドキュメント] を選択、もしくは [Ctrl]+N で新規ドキュメントのダイアログを出します。


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ページサイズには一般的な文庫判であるA6の寸法 105mm×148mm を入力し、「マスターにテキストフレーム」をチェックします。「裁ち落とし」は 3mm そのままにしておきます。
裁ち落としとは、印刷・製本後の裁断のときに切り落とされるフチの部分のことです。このフチの部分を余分にとらず仕上がりサイズギリギリで作ってしまうと、裁断のわずかなズレでページの周囲に白い余白が出てしまうことになります。小説本文の場合フチはもともと余白のことが多いですが、ページ一杯のイラストやベタがあると問題になるので、裁ち落としは必ず設定するようにしましょう。この裁ち落とし 3mm という数値は同人印刷に限らず、チラシやポスターなどほとんどの印刷通販で共通に使われています。
入力が済んだら [レイアウトグリッド] ボタンを選択してください。


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新規レイアウトグリッドのダイアログでは、版面設計で決めた数値を入力していきます。この設定を後から作業が進んでから変えようとするといろいろ面倒なので、版面は最初にきっちり設計して後から弄らなくても済むようにしましょう。
[OK] を選択すると作業画面に移ります。

文字スタイル設定

最初にすべき作業は文字スタイルを作成することです。これをせずにどんどん作業を進めると後でえらく苦労することになります。
文字スタイルとは、同じ種類(たとえば本文、見出し、柱、など)の文字をカテゴリ分けしておくことで、一括で設定・変更ができる機能です。
なぜこれが重要かというと、小説本文にはふつうの文章だけでなく見出しやエピグラフ、あるいは一部分だけ簡体字に変えたりなど、異なるフォント設定が混在することがあるからです。もし本文の一部分だけを簡体字フォント SimSun に設定して、後からやはり Adobe Song に変更しようと思った場合、SimSun で手動検索して一つずつ置換していかねばなりません。手動置換は手間もさることながらミスの原因にもなります。このような場合、あらかじめ「簡体字」文字スタイルを作成し適用しておくことで、文字スタイルの設定を弄れば適応された部分すべてに対して一度に変更を反映できます。


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文字スタイルを作成するには、[文字スタイル] パネル下部の [新規スタイルを作成] を選択します。追加されたスタイルをダブルクリックして設定を入力してゆきます。


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まず基本となる「本文」スタイルを作成しましょう。
ここでは「本文」という名前だけを入力します。入力しない空欄は、ファイル作成時のレイアウトグリッド設定がそのまま使われるので問題ありません。


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次に「見出し」スタイルを作成します。
[基準] を先ほど作成した「本文」に設定します。スタイルに基準を設定すると、その基準となるスタイルを下敷きとして引き継ぎます。つまり「本文」スタイルの設定を変更すると、それを基準とする「見出し」スタイルにも同様の設定が反映されるのです。
見出しは本文よりもすこし大きい 13Q に設定します。


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「ノンブル」スタイルを作成します。ノンブルとはページ毎に振られるページ番号のことです。ノンブルは読者のためにだけあるのではなく、印刷製本業者が丁合を確認するのに必須なのですべてのページに記す必要があります。
Adobe Garamond Pro Regular、10Q、オールドスタイル数字 を設定します。
このノンブルのフォント Garamond については、商業レーベルに依らず自分の趣味で選びました。理由はオールドスタイル数字が使えるためです。オールドスタイル数字とは、数字の上下が揃わずに(アルファベットの"h"やq"のように)ラインが上下に出る書き方のことです。ようするにちょっとオシャレな数字です。商業レーベルでいうと星海社FICTIONSのノンブルなどがオールドスタイル数字になっています。


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「柱」スタイルを作成します。柱とはページ毎の余白に置かれるタイトルもしくは章題のことです。
本文よりすこし小さな 8Q を設定します。


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例に出した「簡体字」スタイルを作成します。
[基準] を「本文」に設定します。フォントを Adobe Song Std L に設定します。


このように、あらかじめ必要な文字スタイルを作成しておき、これから配置する文章に適応してゆけば、文字の設定や変更を一度に反映させることだできるようになります。s

マスターページ設定

次にすることはマスターページ設定です。
マスターページとは、同じレイアウトのページの設定をまとめて管理するための雛形です。マスターページにノンブルや柱を配置しておくことで、同じマスターページを設定されたページにも自動的にノンブルや柱が配置されます。マスターページは本文、扉、イラストなど必要なレイアウトに応じて自由に作成することができます。


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[ページ] パネル上部の欄がマスターページ一覧です。余白を右クリックし、[新規マスター] を選択しましょう。


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新規マスターのダイアログで、名前と基準マスターを入力します。
ここでは「本文」マスターを作成します。プレフィックスは何でもよいですが、複数InDesign ファイルを結合する場合に重複避けになるので、適当な固有キャラクタを入れてください。
基準マスターとは、このマスターページの親となるマスターです。基準マスターを設定すると、そのマスターページを下敷きとしてそれに書き加えるような形になります。ここでは一番最初から存在する「A-マスター」を基準に設定します。


作成した「本文」マスターの左右にノンブル(と柱)のテキストボックスを配置します。位置は(天:8mm/小口:11mm)とします。


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ノンブルを入力するには [書式]→[特殊文字の挿入]→[マーカー]→[現在のページ番号] を選択し、入力された文字に「ノンブル」スタイルを適用します。


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同様に、柱としてタイトルを打ち込み、「柱」スタイルを適用します。


これで「本文」マスターの設定ができました。
ここまで設定できたら、一度ファイルを別名で保存してバックアップしておいたほうがよいでしょう。一度ひととおり設定が済んだテンプレートをとっておけば、後で同じ版面な別のテキストを作成するときに使い回せるからです。

文章の配置

いよいよ文書を配置してゆきます。


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まずは [ページ] パネル下側の空欄を右クリックし [ページ挿入] を選択。ページは流し込むテキストの長さに応じて自動で拡充されるので、ここでは 1ページだけで構いません。また、ファイル新規作成時に置かれたデフォルトのページは消してしまって結構です。


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あらかじめ [文字スタイル] パネルの「本文」スタイルを選択しておきます。[ファイル]→[配置] を選択し、[配置] ダイアログでテキストファイルを開きます。


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カーソルアイコンが変化したらテキストフレームの一番右上マスをクリックすると、テキストが流し込まれます。


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デフォルトの設定では鉤括弧などの約物が半角で表示されてしまいます。テキストを全選択し、[段落] パネルの [文字組み] を [約物全角] に設定することで、全角で表示されるようになります。


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あとは見出し等のテキストを選択して文字スタイルを適応してゆきます。


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縦中横を適用するには対象テキストを選択し、上部パネルの [縦中横] をチェックします。縦中横とは、半角英数字を縦書きにする機能です。


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ルビを振るには対象テキストを選択し、[Alt]+[Ctrl]+R で [ルビ] ダイアログを開き、ルビを入力します。[種類] のうち [モノルビ] は一文字に対してルビを振る場合、複数文字に対してルビを振る場合は [グループルビ] を選択します。

テキスト編集の注意点

文字列コピペのショットカットキーは罠なので注意。
InDesign は、コピーしたプレーンテキストを本文にそのまま [Ctrl]+V でペーストすると、本文とは異なるスタイルでペーストされてしまいます。「本文」スタイルで記述されているところに同じ「本文」スタイルでテキストをペーストする場合は、必ず [Alt]+[Ctrl]+[Shift]+V でペーストするようにしましょう。めっちゃ押しづらいけど我慢。

一旦ここまで

以上で、とりあえず基本的な文字組みはだいたいできるでしょう。
あと必要な知識としては、レイヤー、合成フォント、隠しノンブル、画像の配置、ページの移動、書き出し設定などがありますが、それはまたの機会に。
InDesignAdobe製品の中でもわりと挙動に癖がある方なので、操作感はとりあえず触ってみて覚えましょう。
作家の京極夏彦などはDTPまで自分でやることで有名で、執筆も InDesign 上でやるといった噂までありますが、試しにやってみたらこれが結構面白かったので暇な人は試してみるとよいでしょう。