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ボレロ村上 - ENiyGmaA Code

中3女子です。

暗黒定数式 Vol.1 の印刷事情

同人おじさんです。


今回は印刷所のステマをしようと思う。


文学フリマで頒布した『暗黒定数式 Vol.1』は420ページあり、これを印刷所に発注しようとするとかなり選択肢が狭まってしまう。というのも、ほとんどの同人誌印刷所のセット料金表は、小説本向けのセットでも300ページまでしか記載がない。
別に見積もりを取ったり、設定された追加料金を加えれば(許容範囲内であれば)何ページであろうと発注できるが、必然的に高価格になる。何千部も刷るならともかく、100部程度だと単価が異常に上がってしまう。
なのでそのあたりを念頭に検討をした。その過程で知りえたいくつかの印刷所の特長を備忘録的に記しておく。


ちなみに、暗黒定数式において前提としたのは以下のような項目だ。

  • 文庫や新書サイズだとページ数が嵩みすぎるのでA5判にする。
  • カラー絵2ページ×2箇所。
  • 別刷りのカバーか、もしくは少なくとも表紙にPP加工はかける。


ベテランの同人おじさんにはほとんど今更のことだろうが、同人印刷にさほど詳しくないといった文章系の同人おじさんには参考になるかもしれない。

ポプルス

http://www.inv.co.jp/~popls/

オンデマンド印刷の老舗。文学フリマ参加サークルではシェアが結構あるらしい。
「ソフト書籍セット」というのがあり、カバーと帯のほか、表2,3に見返しが貼られるという珍しい仕様だ。
カバーがラシャ紙なのも珍しいが、実際どういう感じになるかはわからない。コート紙+PPのカバーにしたい場合はオプション料金が必要だ。
「カバー付き文庫・新書セット」というのもあるが、これはA5判はできない。残念だ。


特筆すべきは「いろもじオプション」というオプションだ。
モノクロの版面にカラーを追加できるのだが、版面の1/3以内であればフルカラー画像も配置できる。
他のほとんどの印刷所では、カラーページを追加しようとするときは「カラー口絵」扱いとなり、紙も変わる。何ページもやろうとするとオプション料金も膨れあがり、フルカラーのセットと変わりなくなる。
いろもじオプションであれば、制限はあるが、数十ページに適用しても安くつく。
カラー図表がちょこちょこと入った論文集のようなものを刷る場合は、これ一択ではないかと思う。


オンデマンド印刷の質についてだが、取り寄せたサンプルを見る限りではフルカラー印刷の色はかなりよく出ていると思う。
ただし、PP加工をかけた場合はオンデマンド独特のトナーの盛りがかなり目立つ。マットPPであればそれほどでもない。

ちょ古っ都製本工房

http://www.chokotto.jp/

オンデマンド印刷で、会社自体は老舗だが、同人印刷に本格参入したのはそう昔ではないようだ。
シンプルな装丁に限れば最安クラスだろう。一番安いセットはとにかく安い。
口絵を入れるなど仕様上の都合もあって今回は見送ったが、小冊子でもつくる機会があればぜひ使いたい。
安かろう~という評判も聞くが、文学フリマで購入した知人の本を見る限りではそれなりの出来だ。


書籍用紙(淡クリームキンマリ)の連量72.5kgが標準で選択できるのも嬉しい。


余談だが、ここは元々は学校向け教材や企業向けマニュアルを主に印刷していたが、一般のお客様(と書いてあるがつまり同人界隈の人間)からの要望が増加したため、同人誌をメインターゲットにした部門を立ち上げたという経緯のようである。
上記は当社のサイトに書いてあることで、ここからは2chの同人スレを読んだ上での想像なので信憑性はないが、同人スレに格安の印刷所として当社(当時はまだ同人誌メインではなかった)の情報が貼られ、それを目にしたスレ住人が問い合わせまくったのが発端らしい。
営業的には嬉しい悲鳴でもあっただろうが、印刷製本のクオリティにやたらと厳しい同人界隈の人間を相手にするのは、さぞ苦労であったろうと想像する。

ねこのしっぽ

http://www.shippo.co.jp/neko/

オフセット印刷ではかなり安い方だと思われる。
「文庫と新書のフルセット」や「ペーパーバック本」などのセットがあるが、いずれも文庫/新書サイズ専用。
問い合わせたところ、A5でそれらの装丁に近いものを発注するには、「コミックスセット」のほうでの対応になるそうだ。


ちなみにカバー巻きはやっていないので、巻く作業は自分でやるのが前提になる。(折りやすいようスジ入れ加工は付いている)
カバー巻き加工のオプションもあるにはあるが、専門業者への委託となるため納期が3週間と大幅に遅くなる。
また、オンライン入稿かつセット仕様外の発注の場合は事前に受付に問い合わせが必要になる。
価格は申し分ないのだが、痒いところに手の届かない感が所々ある。


本以外では、オンデマンドのCDフロントジャケットの印刷が安い。
プレスやCDジャケット印刷を専門にしている業者や、同業他社の印刷所を含めても、格安の部類ではないだろうか。
また、オンラインストアではB1ポスターを展示可能なポスタースタンドなど、ありそうでなかなか見つからない商品があったりする。
実は書籍印刷以外の方面のほうが強かったりするのではないだろうか。

栄光

https://www.eikou.com/

これもオフセット印刷ではかなり安い。
「ノベルセット」というのがあり、文庫~A5判まで選択可能だ。
300ページを越える場合は見積もりになるが、420ページかつオフセット印刷の仕様では検討した中で一番安かった。
計算式は不明だが、ページ数増加に対する追加料金の係数が小さいのだと思われる。
(ほどんどの印刷所では、例えば300ページ以降は+8ページ毎にn円、といった計算になる)


それと、元同級生であるBL漫画描きからの評価も良かったため、今回は当社に発注することにした。


ちなみに、執筆と編集の都合上自分の判断で〆切を遅らせたのが理由で、〆切の早いノベルセットは使えなかったため、「サンバカーニバル」というセットで発注した。
〆切が全体的に同業他社より遅いのもここの特長であるようだ。
なお増刷分はノベルセットで発注してある。

プリントパック

http://www.printpac.co.jp/

ここは同人誌印刷所ではないのだが、仕事の関係では専らここを使っている。
同人誌の表紙印刷も扱っているが、表紙のみの印刷であれば関西美術印刷のほうが有名だろう。
ポスター、チラシ、名刺、ポストカードといったものの印刷が安く納期も早い。


オンデマンド印刷ポスターを発注しようと思ったのだが、残念ながら時間的余裕がなかったため、今回は自宅のレーザープリンターで刷ってラミネート加工をかけ貼り合わせることにした。

印刷全般について

印刷を考えるにあたって最初の大きな選択肢は、オフセット印刷かオンデマンド印刷かという点だろう。
百も承知という人間は読み飛ばされたし。


オフセット印刷の版を制作して印刷する。ゆえにイニシャルコストがかかるが、多く刷るほどスケールメリットが出る。
対してオンデマンド印刷はプリンターと同様のデジタル印刷機で印刷する。イニシャルコストは低いがスケールメリットはない。
以前見たグラフによれば、平均的な同人誌で300部がオフセット印刷のスケールメリットがオンデマンド印刷を追い越す(つまり単価が安くなる)分岐点だそうだ。
もちろん印刷物の仕様によるのだろうが、『暗黒定数式 Vol.1』について今回検討した限りでは、100部で同等かオンデマンドが若干安い程度、200部ですでに逆転するといった印象だ。


オンデマンド印刷のデメリットとしてよく挙げられるのは、以下のような点だ。

  • PP加工をかけた時にベタ部分の境界にトナーの段差が見える
  • PP加工が剥がれやすい(特に縁がベタになる場合)
  • 黒ベタがテカって見える
  • 文字が実際のウェイトより太りやすい
  • 淡い色で色ムラが出やすい
  • 湿気のある環境で製本後の本に波打ちが発生しやすい


実際にサンプルを見た印象としても、同じような感想を持った。
とはいえ、フルカラー印刷の色の表現についてはオフセット印刷と較べてもほとんど遜色がなく、そういう意識で見たり光を当てたり斜めから見たりしない限りは気づかないレベルだろう。


今回は、『暗黒定数式 Vol.1』の仕様と部数ではオンデマンドとオフセットで価格が大して変わりなかったため、オフセット印刷を選択した。

その他

上記は小説本である『暗黒定数式 Vol.1』を念頭に検討したものだが、漫画やイラスト本の場合はまた色々違った観点があるだろう。


文章主体の本に限って言えば、ワガママを言いたい部分がいくつかある。
ワガママであって文句ではないことは申しておく。

  • 版面一部にカラー図表を入れたい場合は、その都度口絵オプションにするか、フルカラー本にするかしかほとんど選択肢がない。いずれも高額になる。ポプルスのいろもじオプションのような仕様が同業他社にも広がってほしい。
  • 星海社文庫のような、本文の書籍用紙に口絵もそのまま印刷するような仕様がほとんどの同人誌印刷ではできない。カラー口絵のオプションではほとんどがコート紙で、書籍用紙にはカラー印刷できない。星海社自体は好きではないのだが装丁は好きなので出来るようにならないものか。
  • 300ページを大幅に超えるような印刷がページ数比にして高額になる。丁合や製本の手間や技術がいることは想像つくのだが、何とかならないものか。鈍器本やアコーディオン本がつくれない。
  • 淡クリームの書籍用紙(文庫本で一般的に使われる)がセットに標準の紙となる傾向が業界の動向としてあるようで、これは非常に嬉しい。しかし標準に含まれるのは連量90.0kgの書籍用紙で、より薄い連量72.5kgなどはオプション扱いであることがほとんどだ。薄いほうの書籍用紙も標準で使えるようになればなお嬉しいのだが。
  • これは単なる疑問なのだが、表紙の両端を長くしてカバーのような折り返しにする装丁を、同人誌印刷業界ではどういうわけか「フランス表紙」「フランス装」などと称するようだ。フランス装は本来、表紙の天地小口の三方を内側に折り返した、上製本の糊付けをする前のような状態にした装丁のことを言うはずだが、同人業界では奇妙な変化をしたらしい。


以上、いろいろ思うところを書いた。
さて、暗黒定数式 Vol.2 の装丁はどうするか。
いろいろ構想するのも楽しいが、まず本編を完成させないことにはどうにもならないし、それ以前に本業で進捗しないと動きようもない。
進捗せざるもの生きるべからず。